木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。
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アパート経営では、賃貸収入から経費を差し引いた後の手残りをいかに増やすかが重要です。一般的な事業と異なり、家賃収入には上限があるため、経費の管理や節税対策が不可欠となります。適切な税務対策を行うことで、キャッシュフローを大きく改善することが可能です。アパート経営における税金対策について、木戸真智子税理士が解説します。
まず、最低限抑えておきたいポイントは、個人での青色申告と白色申告の違いです。
白色申告は記載内容が青色申告に比べて貸借対照表がないなど簡略的な記載内容になります。白色申告で確定申告をする場合には、特に届出書などの提出物は必要ありません。記帳方法は簡易的な帳簿でも問題ありません。そのため、自分で申告をする際には、簡単ではあります。物件が少なく、初めて自分で申告するなどの場合には向いているでしょう。
一方、青色申告を選択する場合には青色申告承認申請書の提出が必要です。メリットは最大65万円の特別控除を受けることができます。ただし、帳簿を正確に記録する必要があるため、クラウド会計システムの活用をおすすめします。
会計システムを選ぶ際は、通帳やクレジットカードと連携できるクラウド型のものを選ぶとよいでしょう。不動産投資では、資金管理だけでなく、物件選びも重要です。良い物件が見つかっても、競争相手がいればすぐに売れてしまうことがあります。特に融資が必要な場合は、迅速に金融機関へ相談できる状態でなければなりません。そのため、リアルタイムで経営状況を把握し、試算表をすぐに出力できる体制を整えておくことが大切です。
こうした経営の効率化のためにも、アパート経営においてDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入は欠かせません。
会計システムで試算表を作成する際、これを単なる申告のための資料と考えるのは非常にもったいないことです。物件ごとの収支や利回り、キャッシュフローの計算、レントロール(賃貸条件一覧表)を一元的に管理できるようにしておけば、経営状況を把握しやすくなり、今後の投資計画も立てやすくなります。まだ導入していない方は、まずこの部分から整備することをおすすめします。
青色申告の大きなメリットの一つとして、「青色申告特別控除」があります。不動産賃貸業が事業的規模である場合、65万円または55万円の控除を受けることが可能です。
事業的規模とは、一般的に「不動産賃貸が5棟以上または10室以上であるかどうか」という基準で判断されます。ここで重要なのは、「5棟かつ10室」ではなく、「5棟または10室」のいずれかを満たせばよいという点です。
また、家賃収入に加えて、土地の貸し付けや駐車場の賃貸収入なども事業の実態に応じて総合的に判断されます。5棟10室という基準は法律で明確に定められているわけではなく、あくまで目安としての基準です。
事業的規模に該当する場合でも、申告の方法によって控除額は変わります。e-Taxを利用しない場合、控除額は55万円ですが、e-Taxまたは優良な電子帳簿保存を行うと65万円の控除を受けることができます。
e-Taxは慣れれば簡単に利用できるうえ、オンラインでの手続きが可能なため、導入をおすすめします。この10万円の差は非常に大きく、長期的に見ても節税メリットが大きいため、積極的に活用しましょう。
また、納税の方法として、クレジットカード決済を利用することも可能です。単に税金を支払うのではなく、クレジットカードのポイントを活用することで、納税しながらお得に還元を受けることができます。
試算表や申告書を作成する際に、多くの方が悩むのが経費の扱いです。経費がどこまで認められるのか分からないまま申告をしている方も少なくありません。
特に判断が難しいのが交際費関連の支出です。不動産業者との情報交換や手土産、交流会、食事会など、事業に関連するものは経費計上が可能ですが、証拠として領収書や記録をしっかりと保管しておく必要があります。
また、不動産の情報収集や勉強のために購入する書籍や研修費用も経費にできます。さらに、遠方の物件を視察する際の交通費も、不動産業者との打ち合わせや物件内見が目的であれば経費として認められるため、不動産業者の名刺や物件の資料を整理しておくことが大切です。
確定申告が終わった後も、住民税や健康保険料の負担を見直し、より有利な税制を活用できるか検討することが重要です。特にアパート経営の規模が大きくなってきた場合、法人化することで住民税や健康保険料の負担を軽減できる可能性があります。
法人化のメリットとして、法人契約の保険を活用した資産運用や、退職金・大規模修繕費の積み立てを経費として計上できる点が挙げられます。これにより、税負担を抑えながら、将来的な資金計画を立てることができます。法人において、確定拠出年金を導入することもできます。
適切な税務対策を行いながら、キャッシュフローを管理し、手元に残る利益を最大化することがアパート経営の成功につながります。青色申告の活用、適正な経費計上、法人化の検討など、長期的な視点で計画を立てることが重要です。税制の仕組みを理解し、適切な対策を講じることで、安定したアパート経営を実現しましょう。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。