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家賃を上げられるエリアvs. 上げづらいエリアの二極化も…「金利の世界」に突入した今後のアパート投資市場の動向は?
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投資への関心が高まっている現在、少ない自己資金で始められる「アパート経営」が注目を集めています。1棟アパートを購入する必要があるためハードルが高く見られがちですが、実は年収700万円以上の安定した仕事に就いており、自己資金300万円程度を用意できれば始められる可能性があります。サラリーマンでも比較的手を出しやすい投資のひとつと言えるでしょう。ケイアイスター不動産「アパート事業部」部長の戸塚さんと「コンサルティング営業課」課長の藤井さんに、今後のアパート経営の見通しや可能性について聞きました。

「金利の世界」に突入!今後のアパート経営はどう変わる?
――アパート投資市場の現状と、今後の見通しを教えてください。
昨年度まではコロナ禍でさまざまなことが停滞していたので、金利が上がった現在は、ようやく「金利の世界」に突入したな、という印象です。金利は2026年に向けてまだまだ上昇すると予測していますが、そうすると当然アパートオーナーの支払いも増えるので、家賃を上げざるを得なくなります。そう考えると、今後は「家賃を上げられるエリアの物件」か「家賃が上げづらいエリアの物件」に2極化していき、オーナーはどちらを選択するかを迫られることになると思います。
では、金利上昇に合わせて家賃を上げられるのは、どのような場所なのか。ポイントは「ターミナル駅」です。たとえば、各路線のターミナル駅から1駅、2駅離れた駅。ターミナル駅のアパート家賃はどんどん上昇し、そこには住めない人たちが周辺駅に集まるので、そのエリアならある程度の家賃上昇は見込めるでしょう。
一方、ターミナル駅は近くにないけれど多少栄えている、という駅もありますが、そうした駅周辺のアパートの家賃はおそらく上げづらく、今の利回りで考えた場合、金利が上昇したときに苦しくなる可能性が高いと思います。
――家賃が上昇した場合、入居率への影響はあるのでしょうか?
入居率への影響はあります。ですから、アパートを経営する場合、ターミナル駅を検討しているお客様が「住んでもいいかな」と思える駅、つまりターミナル駅から1駅か2駅ほど下った駅の“駅力”をしっかり判断する必要があるでしょう。また、ターミナル駅の場合は「駅徒歩10分」にこだわらず、駅から11~13分程度の物件であれば需要が出る可能性は大いにあると思います。
では、逆に家賃を上げづらいエリアというのは、どのような場所なのか。たとえば関東圏であれば、国道16号線の外側は厳しいと思います。アパート経営を考えている方は、可能であれば16号線の内側に絞っておいた方が無難でしょう。外側に行くほど家賃は安くなり、利回りも高くなるので魅力的に見えますが、今後はリスクも増大していくと思います。
物件の質も向上?アパート投資がより魅力的になるワケ
――アパート経営の将来性について教えてください。
単純に「アパート経営への投資」に限定していえば、未来は明るいと思っています。理由のひとつは、プレーヤーが増えていること。今はアパートを建てる会社、仕入れる会社が増えています。オーナー様にとっては選択肢が増えることにつながりますし、各社が競い合うことで物件も磨かれます。数ある中から磨かれた物件を選ぶことができる時代が来るのではないでしょうか。
――この数年で「アパートを経営したい」という問い合わせ数に変化はありますか?
最近は非常に増えています。内訳をみると、若い方もいらっしゃいますが、やはり30代後半~40代中盤の管理職の方が多いですね。数でいうと、例年の平均値の3倍以上の問い合わせが来ている状態です。コロナ禍を経て「貯金から投資へ」と投資に関心を持つ層が増えており、選択肢の1つとして「不動産投資」に興味を持たれる方が増えたことが背景にあるのではと思います。
ただ一方で、「年収1,000万円以上でなければアパートは買えない」という先入観を持っている方も多いとみています。ケイアイスター不動産では、ホームページで「年収が700万円以上の安定した仕事についていること」「自己資産300万円程度ご用意できる方」「住宅ローンがあっても買えます」と説明するなどハードルを下げるように努めているので、それが浸透すればさらに問い合わせも増えていくのではないかと考えています。
「これからは波風しか立たない」それでもアパート経営を楽しめるワケ
――中長期的な視点で、あえて不安要素を挙げるなら?
中長期でいうと、やはり人口減ですね。また、職人の数も減る一方なので、建築費は今よりも高くなっていくでしょう。人口減によって借り手も減っていくので、より差別化をしていかなければいけない時代が来ると思います。ですから、今アパートを買われている方々は、数年後に差別化ができていないと新しい物件に負け、家賃を下げざるを得ない事態になりかねません。そうならないようにするためには、今から差別化のための知識や経験、コミュニティー、ネットワークなどの武器を磨いておく必要があるでしょう。それができれば、リスクにも耐えられると思います。
個人的には「面白い時代に入ったな」と考えています。もちろん金利上昇など、さまざまなリスクもありますが、それすらも楽しみながらアパートを経営することができたら、とても楽しい投資ライフになりそうな気がしますね。
これまではまったく波風が立たなかった20年でしたが、これからは波風しか立たないわけです(笑)。ですが、天気予報と同じで、予測ができれば怖くない。そうした予測を事前にしてくれる会社や担当者と一緒に経営していければ、それほど不安に感じる必要はないと思いますので、スリルも楽しみながら、困難を乗り越えていければと思っています。