木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。
投資の基礎
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アパート経営は、長期的に安定した家賃収入を得ることができる魅力的な投資ですが、その一方で資金計画や税務の知識も求められます。本記事では、アパート取得時や所有中に発生するコストや、資金管理のポイントや個人名義と法人名義の選択についても触れながら、賢くアパート経営を進めるための考え方について木戸真智子税理士が解説します。
アパート経営は長期的に安定して賃貸収入を得るという投資の一つです。そのため、長期的な目線が必要になるので、アパート経営をはじめるにあたり、入口から出口まで、ある程度の見通しを立てて投資をしていくことが重要なポイントになります。
では、この入口と出口について、どのようなポイントに気を付ける必要があるのかということについて、まずはアパート取得時点のお話からしていきたいと思います。
アパート取得にあたり必要となるのは、土地と建物ですが、この土地についても、もともと所有している土地なのか、土地も合わせて購入を考えているのかでも、先のキャッシュフローが大きく変わってきます。そして、どういう目的で取得するのかということもここで押さえておきたいポイントです。
もともと所有していた土地でアパートを始める場合、立地条件はそもそも選択できない状況なので、市場として、その場所がどのようなニーズがあるのかというところもしっかり調査をしておくことをおすすめします。
ファミリー向けなのか単身向けなのか、どれくらいの賃料が適切なのか、ペット可にするのか、駐車場や駐輪場などはどれくらい必要なのかなど、この段階で決めることはたくさんあります。
その上で、キャッシュフローの見通しも立てておく必要があります。そして、アパート経営をしていく上での目的も整理しておいたほうがよいでしょう。
アパート経営は長期的な投資になります。必然的に相続などにも大きく影響してきます。ですので、相続対策を見据えた投資であればなおさら、相続の試算もした上で、投資の選定をしていくことが重要です。
また、土地から購入するという場合には、さらに投資額が増えるので、そのための資金調達や金融機関とのお付き合いも重要なポイントです。資金繰りやキャッシュフローについて、より厳しい目線で見通しを立てておくことをおすすめします。
不動産投資にはこれが正解というものがあるわけではなく、その方それぞれにあった投資が正解という考え方になります。ですので、自分に合ったアパート経営とはどんなものかということも明確にした上で物件の選定をしていただくことがポイントです。
ある程度の条件を決めて、これ以上の条件ではないと投資対象ではないというように一定ラインを決めて物件探しをすることも一つです。
アパートの取得にあたり、必要になってくるコストについて、見落としがちなのが税金まわりです。アパート購入費用や仲介手数料などは大きな金額でもあるので、予定はしていてもあとから支払いがくる不動産取得税については、想定していなかったりすることもありますので、余裕のあるキャッシュフローを心がけましょう。
この段階で他にも気を付けておきたいことは、購入時点だけではなく、賃貸経営をしていく上で毎年かかるコストや税金です。
キャッシュフローの見通しを立てることももちろん必要ですが、キャッシュフローと申告のときに作成する決算書はまったく別物になります。
一番恐ろしいのが、キャッシュフローがマイナスなのに、決算書は黒字になるという現象です。これの一番大きな要因は借り入返済です。借り入の元本返済は経費にはならないので、キャッシュフロー上ではお金が出ていきますが、税金の計算では考慮されない支払いになります。
このような状況になってしまわないように購入時点で気を付けておきたいことは、土地と建物合わせて、融資を受けて購入する場合、融資条件や利息、そして、土地と建物の按分割合などをしっかり把握して、シミュレーションをしていく必要があるのです。ここのシミュレーションを怠ると大変なことになりますので、しっかり確認しましょう。
そして、購入時点において、一つ考えておいていただきたいことがあります。それは、個人名義で購入するのか、法人名義で購入するのかということです。
最初は個人名義で購入することが自然な流れなのですが、これから不動産投資を進めていいきたい、これからも買い進めていきたいと考えている場合には、先を見据えて最初から法人化しておくことも一つの選択肢となります。
投資物件が増えるにつれて、賃料収入が増えていき、所得税や住民税それに伴って、その方の状況によっては、健康保険料なども影響してくることがあります。そして、一定の水準を超えると所得税よりも法人税の税率の方が低くなりますので、法人化したほうが、節税になるという段階になってくることもあります。
その段階でもし法人化したいとなった場合、どのような方法が考えられるかというと、基本的には3通りの方法があります。
管理委託方式、サブリース方式、不動産所有方式です。
まずは取り入れやすいのは管理委託方式ですが、節税効果は一番低くなります。節税効果が高いのは不動産所有方式です。
しかし、この不動産所有方式を取り入れるためには、もし個人で所有している不動産であった場合、いったん、個人から法人へ不動産を譲渡する必要が出てきます。そうすると、その時点で譲渡所得税や登記費用、不動産取得税がかかってきます。
ちなみに、譲渡所得税は条件によってはかからないこともありますが、登記費用や不動産取得税はかかってきます。そうなると、先程お伝えしたように最初に個人で購入した段階でも同じように支払っているので、あとで法人化した場合には2回支払うことになります。
購入段階で、個人名義で購入するのか、法人名義で購入するのかということを最初に考えておくことも一つのポイントです。そして、この段階でスムーズに法人に移行できれば良いのですが、金融機関から融資を受けている場合には、条件によっては移行できないケースもあります。
そういう意味でも、最初の段階で、ご自身がどういう投資を今度していきたいかということを決めておくことがとても重要になってきます。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー 税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
2014年税理士登録、2015年4月、税理士事務所エールパートナーを開業。経営支援セミナーなどの講師として活躍するほか、行政書士、ファイナンシャルプランナーの資格も保有。特に、開業・独立に関わる税務相談を得意とし、開業準備や税務、会計や決算など、さまざまな分野で顧客を支え、経営者にエールを送る。